
視聴者に愛されるCM – 2018年度版 08.06.2018
今年アメリカで話題になった広告キャンペーンを振り返ってみましょう。面白く、ビューワーの知的好奇心をくすぐることの出来るコマーシャルが注目を集めているようです。現代のオーディエンスは、いつでもビデオや映像に触れているため、どんどん賢くそして知識も豊かになっています。かっこいい車、キラキラした髪、美味しいビール…そういった普通のイメージにはもう慣れっこで、飽きてしまっているのかもしれません。映像の舞台裏をチラリと見せたり、コマーシャルのステレオタイプを逆手にとったり、技術や企業を親しみやすくさせたり、そういった広告キャンペーンが歓迎され喜ばれています。
“Alexa Loses Her Voice” by Amazon
まずは、アマゾンの面白くて豪華なCMを観てみましょう。
Alexa の声が消えてしまい、Amazonの会社は大騒ぎ。彼らはハリウッドスターにAlexaの声の代わりをしてもらおうと思いつきます。ゴードン・ラムゼイ、カーディ・B、レベル・ウィルソン、アンソニー・ホプキンスといったセレブリティがAlexaの代わりを務めようとしますが・・・華麗に失敗します。
沢山のカメオ出演と様々なシチュエーションを見せることで、「次は誰が出てくるの?」「次は何が起こるの?」と、視聴者の好奇心を掻き立てます。そしてこのファンタジー的な世界観は、「もしもAlexaが私をセレブとこんな風に繋げてくれたら面白いな」「Alexaを使ってみたらどうだろう?」と、観客に想像させます。…視聴者がその商品を実際に使っているところを想像させてみせることができたら、CMの目標はほぼ達成されたと言えるのではないでしょうか?
“It’s Yet Another Tide Ad” by Tide
これは、楽しく賢い「メタ・コマーシャル」と呼べる作品です。デヴィッド・ハーバーがお洒落な車を運転している、車のCMのようなイメージから始まります。しかし、シーンが変わると、ハーバーが仲間とバーに集まっています—まるでビールのコマーシャルのように。しかし、次のシーンでは、白スーツに身を包んだハーバーが貝殻の中から現れます。そう、これは、車、ビール、保険、ジュエリー、ソーダ、寝具、シェービングクリームなど、色々な商品のCMの「あるある」を真似ているのです。しかしハーバーは、自分が出演しているのはTide(洗剤)のCMだと言います。
ハーバーは、「どんなCMもTideのCMだ」と言います。どう言うこと?なぜなら、登場人物が皆クリーンな洋服を着ているから!
このCMを見てしまった視聴者は「クリーンな洋服=タイド」という結び付けをせずにはいられなくなります。「やられた!その手があったか!」と言いたくなるような作品です。
“Hair You Can Believe” by Suave
ヘアケア用品の典型的なCMのイメージから始まります。輝く、美しい、カールした髪。しかし、こういった完璧なイメージを作るために企業がどんな仕掛けをしているのかが明かされます。そのトリックは、不誠実で、視聴者を不安にさせます。もしくは怒りすら覚えます。しかし、こういったやりすぎな仕掛けを見せた後、Suaveは「私たちは違います。私たちは、モデルに自分で髪をセットしてもらいます」と宣言します。Suaveのモデルが、自然体で幸せな様子を見ると、私たち視聴者は、完璧で嘘なCMよりも、Suaveのもっと自然で本物らしい広告に好意を感じます。
“Raising Voices” by Vodafone
これはスタッフ・ピックです。このシンプルながらも力強いCMでは、子供たち—多くは女の子ですが—が、世の偏見やステレオタイプについて、真っ直ぐな疑問を口にします。「どうしてスーパーヒーローは皆男の人なの?」「どうして男の大統領は沢山いるのに、女の大統領はこんなに少ないの?」と。
こういった正直な疑問を前にすると、私たち視聴者は、不公平な世界と、男女不平等を当たり前に捉えてしまっている自分たちを反省するようになるのではないでしょうか。
今年の公告キャンペーンの中から、4つのCMを見てみました。それぞれユニークな作品ですが、どれも視聴者の経験や感情を重視していることが分かります。
Hideoki Productionは、物語作りにより力を入れ始めています。様々なコンテンツを作るだけではなく、コンセプトや視聴者の経験など、広いストーリーテリングをクライエントと一緒に考えています。ブランドをもっと広く知られた、親しみのある、そして人々の心に触れるようなものにするために、クライエントと歩んで行きます。